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2012年5月28日 (月)

『にんじん』の効用 ②

前回の続きですが、10ヵ月くらい前かなあ。
去年の夏の話。

その彼ですが、去年だから小学6年生。

友だちの家に僕とふたりで謝罪に行った。
理由は、
学校で友だちと喧嘩をして、殴ったからだった、確か。


僕がこのグループホームで仕事をするようになったのが、
去年の4月だから、働き始めて数ヶ月経った頃で、
彼との関係もまだまだできていなかった頃の話。

謝りに行ったのはいいが、彼が言う。

「ホームに帰りたくない。」

もう暗くなっていたから、8時頃だったかなあ。

「そう、じゃ、しばらくいいよ。」

ふたりでちょっと歩くことにした。

僕も引っ越して間もなくて道がよく分からず、
林の中とか歩いているうちに、
彼も道が分からなくなってしまった。

9時。

「もうそろそろ、帰ろうよ。」

「いやだ。」

ホームに戻ると、恐いリーダーが待ってるからな。
こんな時間になったら、大変なことになるもんなあ。

あ、これは内緒ですが、
リーダーは30歳くらいの女性です。


「今日は帰らない!」

困ったなあ。

「じゃ、交番に行って相談しよう。」

歩いているうちになんとかバス通りに出てきたので、
近くの交番に行って、おまわりさんと話をした。

「この子が施設に帰りたくないと言ってるんですけど、
 今日は、ここに泊めてもらえませんか。」

「それは無理だね。
 僕さあ、もう遅くなったからおうちに帰りなよ。
 みんな心配してるよ。」

30分くらいは交番で話をしてたかな。
何の解決もなく、また歩き始めた。

10時。

「だから、どうするの?
 おまわりさんも言ってたでしょ。
 泊まるとこなんてどこにもないんだよ。」

「そんなこと言っても、帰らない!」

そんじゃ、しょうがない。

僕も腹を決めた。

「いいよ、分かった。
 今日は泊まるところがないから、近くの公園に寝よう。
 それで、朝になったらどうするか考えよう。」

そして、彼とふたり、公園へ。
道路よりちょっと高いところにある公園で、光が入らず暗い。

「じゃ、僕はこの倉庫に寄りかかって寝るから。
 おまえは好きなところに横になんなよ。」

僕は、倉庫に寄りかかり、寝たふり。

っていうか、こんなところで寝れるわけがない。
蚊が飛んできてかゆいし。

まあ、でもここは辛抱、辛抱!

さあ、彼が折れるまでの勝負だな。


だが、勝負は結構あっさりついた。

11時半くらいだったかな。


「あのさあ、暗くて恐いから、ホームに帰る。」


ほんと、根性なし。

ああ、情けない奴。

まあ、何時間かは付き合うつもりでいたんだけどね。


そんな話。


  **********


あ、『にんじん』出てきてないじゃん。

忘れてた。


『にんじん』は、彼と一緒に友だちの家に、
謝りに行ったときに友だちのお母さんにもらったもの。
「たくさんもらったから、施設のみなさんで食べて下さい。」
10本くらいもらった。

それで、夕飯も食べないで、
暗い道をふらふら歩き回っていたときに、
その『にんじん』にそのまま齧り付いた、っていうわけ。


Data002


「腹は減っても、もう食べたくないね、にんじんは。」

「うん。」

ふたりで一本ずつ食べた後、そんな会話をした。

そんなこんなの関わりの中で、
この子どもともだんだん関係が取れてきたんだと思う。

だから、昨日の脱走事件も、
7時くらいで済んだんだと思うんだよね。


  生の人参、
   まるごと一本囓るのは相当辛い・はげおやじ・より


★ もちろん、ドレッシングもマヨネーズもないし。


★ 長い話にお付き合い、ありがとうございました。

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コメント

にんじんを
まるごと齧るのはつらいですね。
よほど、おなかが空いていたのですね。

はげおやじさんが、付き合ってくれたこと、
うれしかったのかな。

にんじんといえば ,有名な小説がありますよね。
昔 読んだことあります。
確か、 家庭環境のよくない少年の成長話だったような。

その子が、にんじん って あだ名だったような。

古今東西、にかかわらず、不遇な子供は
自ら、立ち上がっていかなくてはならない。

親がいようと いまいと。

皆、自立して、行かなければならない。

それは、
不幸であろうと
幸せであろうと、同じですよね。

ほんとうに、むずかしいお仕事ですね。

  きらりん様

その子が嬉しかったどうかは分かりませんが、
『一緒にいる』ことが大事なんだろうと思います。

僕ら職員は、親と違って交代で子どものお世話をします。
だから、親ほどは親密な関係をなかなか作れません。
当たり前です。

ですが、その中で関係を深めていかなければなりません。
そうでなければ、仕事が仕事として成り立っていかないのですから。

今日は休みでしたが、
午前中、中学校の体育祭を見学に行きました。
子どもたちはきっと見に来てもらいたいはずですよね。

親は、休みで体育祭に応援に行きます。

それが普通です。
だから、僕も休みで応援に行きました。

仕事とプライベートがなかなか分けられない仕事です。

  
  ほんと特殊な仕事だと思う・はげおやじ・より

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